直前に書いた国連と科学者のGAPの話への反響が予想を超えて大きかった。このテーマでの掘り下げを続けてゆきたい。ここではまず世の中の社会的課題を国連がどう整理しているかを見てゆこう。
SDGsとは?
みなさん、SDGsって知ってますか?
Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」と訳されている。
基本的な知識としてまず国連広報センターが発信している情報で手に入るが、まとめておこう。
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/.../sdgs_logo/
参考図書:「SDGsが問いかける経営の未来」モニターデロイト編(日経新聞社刊)
2030年までに達成すべき17の社会課題の目標として2015年に国連で採択された。
これまでの経済発展が膨大な富の創出を実現する一方、経済発展の前提となる豊かな環境や、人権・平等といった社会的公正、そして平和への影響を顧みないやり方を「持続不可能」とし、
社会や環境と調和し促進するような経済の在り方を追求する、2030年を期限とする目標の枠組みで、2015年の国連総会にて全加盟国(193カ国)の支持の下、採択された。(P51より抜粋)
SDGsの基本的な構造は、17のゴールと、その下に169のターゲットが組まれていて、その進捗を244の指標で測る、という構造である。
17ゴールでは持続可能な開発に係る主要な課題領域ごとに、世界が2030年までに到達すべき姿を描いており、ターゲットはこれらのゴールの実現に向け達成すべき具体的な目標を定めている。
(P51より引用)
17のゴールをまず見てみよう
SDG1 貧困をなくそう
SDG2 飢餓をゼロに
SDG3 全ての人に健康と福祉を
SDG4 質の高い教育をみんなに
SDG5 ジェンダー平等を実現しよう
SDG6 安全な水とトイレを世界中に
SDG7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
SDG8 働きがいも経済成長も
SDG9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDG10 人や国の不平等をなくそう
SDG11 住み続けられる街を
SDG12 つくる責任使う責任
SDG13 気候変動に具体的な対策を
SDG14 海の豊かさを守ろう
SDG15 陸の豊かさを守ろう
SDG16 平和と公正を全ての人に
SDG17 パートナーシップで目標を達成しよう
ゴールとターゲットを理解する
どう思いますか、これだけだと単なるスローガン、また始まったな、キレイゴトのオンパレード、くらいにしか見えないが、これは単なるスローガンではない。
それぞれのゴールは、どれも国際社会が初めて取り組む課題ではない。やらねばいけないことがわかっているのにそれを阻む政治・経済的な障壁などが重なって、解決できていない課題と思った方が良さそうだ。
そこで、17のゴールは解決されていない課題をなくすという問いかけであり、
その実現するレベルをターゲットとして設定している。
最初のSDGからそのターゲットを見てゆこう
ゴール SDG1 貧困をなくそう
ターゲット
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義される極度の貧困をあらゆる
場所で終わらせる。(極度の貧困を完全になくすこと)
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、
子供の割合を半減させる。(各国の貧困を2015年当時より半減させる)
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度および対策を実施し、2030年までに
貧困層およびき弱層に対して十分な保護を与える。(貧困層への社会保護制度の構築)
1.4 2030年までに、貧困層およびき弱層をはじめ、全ての男性、女性が、基礎的サービスへの
アクセス、土地およびその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、
適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加えて、経済資源についても平等
な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層やき弱な状況にある人々の強靭性(レジリエンス)を構築し、
気候変動に関する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境ショックや災害に暴露やき弱性
を軽減する
SDG1の読み解き
貧困削減は、1960年代から国連が掲げる最優先課題であり、このSDGsでもナンバー1になった。誰一人取り残さない経済システムの必要性を訴えている。
具体的なターゲットは大きく2つ。(以下P61より引用)
1. 適切な社会保障制度や金融サービスをはじめとした貧困層への基本的なサービスの提供。
土地等の財産、天然資源、マイクロファインスを含む金融サービスへのアクセス
2. 気候変動への対応や、自然災害、紛争、その他様々なリスクに対する脆弱性を軽減し、これらshショックをきっかけに貧困に陥らないようにすること
となる。
私のこの段階での5つの疑問
このテーマでは、まずSDGsとは何かを理解することで話をスタートさせた。
しかし、このレベルでは、正直、このゴールとターゲットを眺めただけではSDGsとして何故今叫ばれているかの腹落ちはまだしていない。
今回参考にした書籍では経営の未来への警鐘を鳴らすが、日頃の日本企業の経営とのGAPはあまりにも大きい。
このテーマでは私の素朴な疑問をあげて終わることとしたい。
(疑問点1)
17のゴールと169のターゲットを2030年に達成できなかったらどうなるのか?
(疑問点2)
17のゴールを同時に達成することはそもそも可能であるのかの検証がどこまでされて
いるのか? 1つのゴールを達成するために、他のゴールを犠牲にするような負の
相関関係にあるものはないのか?
スローガンではないという説明が多くされるが、どういうモノサシで見ればいいのか
私は理解できていない。
価値基準としての共通のモノサシや考え方がきちんと用意されているのだろうか?
(疑問点3)
国連のこうした策定が今後の世界の民主主義に与える影響は?
新自由主義の後に大国が自国優先の政策に舵をきると同時に、曖昧な国連による決定方式が
国家や政府を超えた新たなコントロールの存在としてどう機能するのか?
(疑問点4)
グローバルな社会課題に対して、産業革命の再来と言われる変革の時期に、どう経営改革を
すればいいかの腹落ちがしたい。
今の経営スタイルを見直せと沢山の言葉が出てくる。あげてみよう。
・経営成果を測るモノサシの多様化・変動への対応
・個別組織経営(エゴシステム)からエコシステム(シェアリング)へ
・中期計画(3〜5年計画)から 短期(半年から1年)+超長期戦略へ
・グローバルな社会課題から新規事業を
ほとんどの日本企業はできていないのではないか。
(疑問点5)
次の言葉を自分の言葉で理解したい。そうこういう社会になるというイメージを描いて。
・サステナブル
・循環型エコノミー
・エコシステム
社会から求められていることを次の4点から理解する
・企業の評価を今までの情報開示によるやり方から 目標設定や実績のトラッキングへ
・自己評価から第3者による評価
・自社活動からサプライチェーンや業界・政府の巻き込み
・新たな社会課題への対応(事業機会とリスク分析の手法)